下水道システムと下水処理

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はじめに

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水質汚染問題は、海岸の閉鎖、人間の健康への悪影響、問題の多い水域環境などの原因となっています。その、水質汚染問題のために活動しているサーフライダーのメンバーと、水質汚染問題に関心を持っている市民のみなさんにとって、雨水や廃水の収集と廃水処理の基本を理解することは、水質汚染問題を理解するためにも必要なことです。

最初に理解しておきたい事は、米国のほとんどの地域では、下水道システムは、雨水排除システムと汚水の収集と処理のためのシステムの、2つの独立したシステムに分かれているということです。(約注:分流式下水道が採用されている)。これらの2つのシステムは、明らかに異なる目的のために設置されています。

雨水排除システム

雨水排除システムは、雨といと雨水排水路、開雨水排水溝、地下雨水排水管から構成され、洪水を防ぐために設計されています。雨水排除システムには、通常ポンプは設置されていません。水は重力に従って低い地点、普通は海に向かって流れます。雨水排除システムの基本設計方針は、雨水とその他の都市流出水を住宅用地、商用地、工業用地から出来るだけ速く流出させて、小流、河川、および直接海に排出することです。土木技師は、雨水排除システムを水のスーパーハイウェイとして設計しました。合流式下水道システム(Combined Sewer Systems)が採用されている地域を除いて、流出先があなたのお気に入りの海岸であっても、流出以前に排出される水に汚水処理が行われることはありません。そのため、路面、排水溝、事業用施設、そして芝生や車庫前の道路から流出する水によって運ばれる動物の排泄物、殺虫剤、肥料、自動車からの液体漏れ、ブレーキパッドの残留物、および一般のゴミは、最終的に海岸に流出します。

雨の降らない時期に排水溝や路面排水溝に流れている水は、汚染されていると疑ってみて間違いないでしょう。人間が都市とそれにともなうインフラ、そして何マイルも続く舗装道路を完成させる以前には、雨の降らない時期に都市流出水が排出されることはありませんでした。当然、海岸に汚染物質が流出することもありませんでした。雨天時にも、未開発の土地と沿岸湿地は、自然に流出水をろ過し浄化することができていました。現在、排水溝は、ほとんどいつも汚れた水の流れる川のようになってしまいました。

私たちに何ができるでしょうか?一番大切なことは、水道の蛇口を閉じて、無駄な水を使わないようにすることです。芝生に水をやりすぎないようにしましょう。スプリンクラーを調整して舗道にまで水がかからないようにしてください。(水が無駄になるだけで、なにも成長しません)。一般に、ガソリンスタンドの洗車は、廃水を貯めて再利用しています。もし、自宅で洗車をするのなら、最低限の水で洗車をすませて廃水は舗装されていない場所に流すようにしてください。車のオイル漏れは修理しましょう。ペットの排泄物は持ち帰ってください。芝生に肥料をやりすぎないようにして、殺虫剤と除草剤を使わないようにしましょう。ホースで水を流す代わりにほうきを使ってください。ここにある方法を友達にもすすめてみてください。排水路に水が流れ込んでいるのをみつけたら、どこから水が流れているのか探してみてください。もし、水の流出元がわかれば、その家の人にもっと環境に配慮した庭造りを実行するように話してみてください。

衛生的な下水収集と処理システム

下水収集と処理システムは、時には、衛生的な下水道システムとも呼ばれ、住宅と商用施設内の排水路(トイレ、流し、シャワー、洗濯機、食器洗い機)から流出する廃水を収集し処理を行っています。下水収集と処理システムは、雨水排除システムのように、可能な限り重力を利用して廃水を流下方式で処理施設に運びます。重力に従った流下方式を採用しているため、処理施設の多くは、川や海沿いの低地に位置しています。もし、廃水をポンプで運ぶ必要があるなら、廃水は、地下にある「くみ上げ場」か「ポンプ場」と呼ばれるコンクリート槽に流入し、ポンプを使って「加圧主管」を経由して処理施設に運ばれます。衛生的な下水道には、下水道のマンホールが下水管にそって垂直に設置された閉管路が例外なく採用されています。もし、主下水管路が下水管に流されたグリース、木の根、粗大物質によってせき止められた場合、未処理の下水が下水道のマンホールから溢れだし、道路の表面や近くの雨水排水路に流れ込み、未処理のまま海に流入します。このような状況は、海岸閉鎖の主な原因の一つになっています。

処理施設に流入した下水は、その後、通常、物理的処理と生物学的処理の2つの方法を使って処理されます。いくつか処理段階があり、それぞれ、一次処理、二次処理、三次処理と呼ばれています。一次処理では、液体に混ざっている固形物を分離します。通常、未処理の廃水は、最初に流入口のスクリーンを通過し、おおきなゴミのかたまりや破片が除去されます。次に、廃水は、清澄機と呼ばれる大きな沈殿池に流れ込み、ここで浮上性と沈殿性の固形物の両方が除去されます。浮上性の固形物は、水の表面からすくいとられ、沈殿性の固形物は、清澄機の底から除去されます。沈殿性の固形物は、一次処理汚泥と呼ばれています。ここで働いている基本原理は、流れの速度をゆるめて、重力と密度の差を利用して水と固形物を分離することです。場合によっては、微粒子の沈殿と凝集を促進するために、塩化第二鉄および/またはアニオン性ポリマーなどの薬品が、清澄機に投入されることもあります。この処理は、高度一次処理と呼ばれることがあります。

一次処理の後でも、廃水には、かなりの量の浮遊有機廃棄物が含まれています。また、廃水と固形物の両方に、高濃度の糞便性大腸菌とその他の種類の細菌が含まれています。残された細菌と固形物は、二次処理の過程でさらに除去されます。二次処理では、一次処理後に残された有機廃棄物を分解するために、好気性細菌(増殖するために酸素を必要とする細菌)の菌種を利用します。好気性細菌を利用した、最も一般的な2つの処理方法は、散水ろ床法と活性汚泥法です。散水ろ床法処理では、有機廃棄物を食べる細菌のぬるぬるした膜でおおわれた石やそのほかの素材を床に敷き詰めて、その上に廃水を散水します。活性汚泥法は、散水ろ床法より効率的ですが、より複雑で多くのエネルギーを消費します。廃水は、細菌を含んだ汚泥と空気に混ぜられ、二次処理清澄機の中で汚泥が沈殿するまで放置されます。散水ろ床法と同じように、細菌は、大部分の有機廃棄物の微粒子を食べて分解します。処理水は、二次処理清澄機から放流管やタンクに送水され、さらに高度な処理が行われるまで貯留され、処理後は、再生水として利用されます。

二次処理清澄機の中で沈殿した固形物は、一次処理清澄機から除去された固形物に混ぜられ、汚泥消化タンクという大きな密閉タンクに送られます。消化タンクの中で、好気性細菌が汚泥の中に含まれる有機物を分解しメタンガスを生成します。メタンガスは、暖房や処理施設のための電力供給に利用することが出来ます。消化された固形物は、脱水され(水は、固形物からろ過機を使って除去されます)、結果残されたバイオソリッドは、肥料、土壌改良用の土、燃料として利用することが可能です。 再生水は、一次処理と二次処理が施された廃水で、通常、さらにろ過と塩素消毒/脱塩素処理の両方を行うか、ろ過または塩素消毒/脱塩素処理のどちらかを行って放流されます。再生水は、公園やゴルフコースの潅漑、そして、一般の造園によく使われています。再生水は、飲料水には適していません。

連邦水質汚染防止法は、処理水を放流する前に一次処理と二次処理を行うことを、全ての下水処理施設に義務付けています。ただし、場合によっては、下水道局は301(h)免除措置手続きをとることで、二次処理が完全に終わっていない処理水を排出する許可を得ることが出来ます。カリフォルニア州オレンジ郡のオレンジ郡衛生地区の下水道局は、過去に301(h)免除措置を受けてきた下水道局のひとつです。オレンジ郡衛生地区では、廃水の約半分に二次処理が行われ、残りの半分は高度一次処理が行われただけです。2つの廃水の流れは合流し、ポンプを使って長さ4.5マイルの放流管に送られて海に排出されます。2002年には、サーフライダー・ファウンデーション、その他の環境団体、一般市民からの働きかけで、オレンジ郡衛生地区の取締役会で、301(h)免除措置継続の申請を取り消してもらうことができました。現在、処理施設で完全に二次処理を行うために、複数年にわたる数百万ドル規模の改修工事が行われています。新施設は、2011年または2012年に稼働を始める予定です。サンディエゴ市も、高度一次処理しか行っていないポイントローマ処理施設のために、301(h)免除措置を取得しています。サンディエゴ市では、処理の水準をあげるよりも、他の下水処理施設で処理された再生水の生産と利用(間接的飲用水再利用の可能性を含めて)を増やすことによって、ポイントローマ処理施設から部分的に処理された廃水の排出量を減らすことに力を注いでいます。

二次処理よりさらに高い水準にまで廃水を浄化することができます。三次処理と呼ばれる一連の処理過程を使えば、二次処理済みの廃水を飲料水に使える状態にまで浄化することができます。三次処理の過程には、逆浸透と精密ろ過が含まれています。この2つのどちらの過程でも、処理水をポンプで膜に通して細菌とウイルスを含む微粒子を除去します。処理水は、紫外線、オゾン、または塩素を使用して消毒することができます。このような処理過程の組み合わせは、現在、カリフォルニア州のオレンジ郡で採用されていて、群の地下水の人口かん養システム(Groundwater Replenishment System)では、飲料水に適した質の水を一日当たり約7000万ガロン生産しています。

論理的には、地方自治体の廃水処理施設は、放流水をまったく排出せずに稼働することが可能です。二次処理済みの廃水は、潅漑やその他の飲料水以外の目的に再利用が可能で、三次処理を行えば処理水から飲用水を生産することもできます。サーフライダーのメンバー全員が、処理水を海に排出せずに100%再利用するというゴールに向かって努力するように、地元の下水道局に働きかける必要があります。下水処理について知ることは、水について知ってほしいことの教育プログラムの一環であり、狂ってしまった水循環機能を正常に近づけるために必要なプロセスです(Knowing Your H2O and stopping the Cycle of Insanity)。

追加情報

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301(h)免除措置のページを参照してください。

また、天然資源保護協議会による「下水の中で泳ぐ:下水による水質汚濁の深刻化と、ブッシュ政権によって私たちの環境と健康がどのような危険にさらされているのか」(Swimming in Sewage: The Growing Problem of Sewage Pollution and How the Bush Administration Is Putting Our Health and Environment at Risk)と題されたレポートも参照してください。

訳注:この記事は、サーフライダー・ファウンデーション・USAによってまとめられたものを、サーフライダー・ファウンデーション・ジャパンのボランティアが翻訳したものです。アメリカ合衆国の環境問題、政府機関、法律などに基づいて書かれたもので、日本の現状に基づいて書かれたものではありません。