海洋ゴミ
From Beachapedia
はじめに
以下の記事は、カリフォルニア州沿岸委員会(California Coastal Commission)のウェブサイトに掲載された、海洋ゴミについての情報をもとに書かれたものです。海洋ゴミを、「プラスチックゴミ」と呼ぶことも出来るでしょう。「プラスチックゴミ」のほうが、この物質の性質をより正確に描写しているといえます。
毎日、何百万人もの米国人が、海岸や水辺で楽しい時間をごしています。しかしながら、これらの人々の多くは、自分たちの日常活動が、車の運転、家庭ゴミの不適切な廃棄、また、タバコの吸い殻を地面に捨てるという些細な行動までが、沿岸に生息する植物と動物に悪影響を与えていることに気づいていません。これらのゴミは、海岸に生息する生物にとって有害であり、それらを死に至らせることもあります。汚染は、海岸利用をする人たちの楽しみを損なうとともに、海で泳ぐ人、サーフィンをする人、その他、海岸での活動に熱心に参加している人たちの体調に悪影響を与えることがあります。水質汚染問題を解決するためには、私たち全員が関与する必要があります。
ゴミはどのようにして海洋ゴミに変わるのか
次に道を歩く機会があれば、周囲を見回してみてください。雨が降ると、歩道と路上のゴミは、排水路にたまりあなたの市の雨水排水路に押し流されます。ほとんどの雨水排水路は、最も近い水路に雨水を直接排出します。そして、排出された雨水は、最終的に海に流入します。また、ゴミは、レクリエーション用や商用のボートを利用する人によって海に直接捨てられることがあります。海岸を利用する人たちがゴミを捨てていくこともよくあります。
ゴミで汚染される海岸
私たちは海と海岸が大好きです。カリフォルニア州に住む人の10人中9人が、今年、最低1度は海岸を訪れるでしょう。他の、海岸沿いのほとんどの州で同じような統計が出ています。残念なことに、人々が海岸に到着すると、目に入ってくるものは砂と波だけではありません。近年ある夏の間に、カリフォルニア州オレンジ郡は、毎週、ゴミ収集車10台がいっぱいになるほどのゴミを6マイルの海岸地域から集め、それにかかった35万ドルの費用は、税金によって賄われました。いくつかの郡では、さらに多くの税金を費やしています。
1975年、全米科学アカデミーは、貨物船や客船などの海上の汚染源が、海に140億ポンドのゴミを投棄したと推定しています。1988年、米国は、MARPOL(訳注:船舶からの海洋汚染防止条約)付属書Vに調印して、ゴミの海上投棄を規制し、海にプラスチックを投棄することを禁止した国際議定書に調印した他の64国に加わりました。MARPOLのような法律は、海岸と海に捨てられるゴミの量を軽減するのに役立っています。
それでも、プラスチックによる汚染は依然として大きな問題となっています。最近の調査によると、中心に向かって自然にゴミを集める還流として機能している北太平洋中央旋回で、平方マイルあたり平均334,271のプラスチックの破片が見つかりました。[1]詳細については、Algalita.orgをご覧ください。
10年以上にわたるボランティアによる海岸清掃のデータを分析したところ、海岸で集めたゴミの60から80パーセントが、陸上の汚染源から排出されていることが明らかになりました。海洋環境のゴミは、動物と人間にとって有害です。プラスチックの海洋ゴミは、ウミガメの全種の86パーセント、海鳥の全種の44パーセント、海棲哺乳類の43パーセントを含む、世界中で少なくとも267の種に影響を与えています。[2]
References
- ↑ Moore, C. J., S. L. Moore, M. K. Leecaster, and S. B. Weisberg, 2001. A comparison of plastic and plankton in the North Pacific Central Gyre. In: Marine Pollution Bulletin 42, 1297-1300.
- ↑ Laist, D. W., 1997. Impacts of marine debris: entanglement of marine life in marine debris including a comprehensive list of species with entanglement and ingestion records. In: Coe, J. M. and D. B. Rogers (Eds.), Marine Debris -- Sources, Impacts and Solutions. Springer-Verlag, New York, pp. 99-139
海洋ゴミが野生生物に与える悪影響
野生生物に絡まる
釣り糸、固定用のバンド、ビール缶のプルリングなどのありふれた物が海洋動物の動きを阻害することがあります。一度、ゴミにからまると、動物は、餌を食べたり、呼吸したり、泳ぐことが困難になり、その結果、死に至ることがあります。プラスチックは、分解するまでに何百年もかかるため、何年にもわたって、動物にからまり死に至らせることがあります。
野生生物に間違って摂取される
鳥、魚、哺乳動物は、プラスチックを餌とよく間違えます。なかには、ひなに間違ってプラスチックを与える鳥もいます。プラスチックが胃の中にたまると、動物は満腹であると錯覚してしまうため、飢餓で死ぬことがあります。ウミガメは、プラスチックの袋をお気に入りの餌のひとつであるクラゲと間違えます。死んだコククジラの胃の中からでさえ、プラスチックの袋とシートが発見されたほどです。浮遊している海洋ゴミのほぼ90パーセントはプラスチックです。プラスチックには、耐久性、浮力、海水中に含まれる毒性の汚染物質を吸収して濃縮する性質があるため、海中生物にとって極めて有害です。
プラスチックペレットまたは「ナードル」は、世界中で見られるプラスチックゴミの種類のひとつです。プラスチックペレットは、プラスチックの製造工場に運ばれ溶かされて、使い捨てのフォークやボトル、コンピュータモニタ、玩具などの製品に加工される前の原材料です。これらのペレットに蓄積される海水からの有機系汚染物質についての研究の詳細は(また、この研究に参加するためには)、インターナショナル・ペレット・ウォッチ(International Pellet Watch)をご覧ください。
海洋ゴミが人間に与える悪影響
海岸を訪れる人は、海岸に残されたガラスや金属の破片でけがをすることがあります。また、海洋ゴミは、漁業従事者とレクリエーション用のボートを利用する人の安全と生計を脅かします。網と単繊維の釣り糸は、ボートのプロペラに絡まり、プラスチックのシートと袋は、冷却用の水の取水口を塞いでしまうことがあります。このような被害の結果、航行の安全が脅かされ、修理に多額の費用がかかり、漁のための時間も失われます。あるオレゴン州にある港で行われた調査によると、漁業従事者の58パーセントが、海洋ゴミが原因で道具に被害を受けた経験があることが明らかになりました。また、平均的な修理代は、2,725ドルでした。
なぜ使用量削減、再利用、リサイクルが有効なのか
まず、使う資源の量を減らすことです。汚染問題の多くは、実のところ、資源の間違った使い方による問題だといえます。 なにかひとつリサイクルや再利用するたびに、人間と野生生物に悪影響を与える海洋ゴミの問題の一部になるはずだったゴミをひとつ減らすことになります。
私たちが日常生活で使っているものは全て、木、石油、砂、水、土壌、金属などの天然資源から作られています。そして、それらの素材の多くは再生可能な資源ではありません。
これらのものを埋立地に捨てることは、私たちがこれから利用できる再生不可能な天然資源の総量を大幅に減らしてしまうことになります。
問題解決に協力しましょう
海岸に集積したゴミは、日常生活を送っている普通の人々によって引き起こされている、はるかに深刻な水質汚染問題の症状です。雨水は、油を駐車場から、肥料を芝生から、ペットの排泄物を歩道から、その他の汚染物質を「非点源」の汚染源から洗い流します。そして汚染された雨水は、雨水排水路に流入し、陸地から海まで運ばれます。これらの毒素が原因で、海洋生物は中毒を起こし、私たちの水源は汚染されています。私たち全員が、使用済みの車のオイルをリサイクルする、車のオイル漏れを修理する、ペットの排泄物を持ち帰る、毒性のない製品に切り替える、などして問題解決に協力することができます。また、その他の日常活動を改善することで、私たちの水域を透明で汚染されていない状態に保つことができます。
その他にできること
- 家庭、仕事場、学校で、使用量削減、再利用、リサイクルを実行する。
- 再生材から作られた、できるだけ包装の少ない、または包装されていない製品を買う。
- 雨水排水路にゴミをためないこと―雨水排水路のゴミは海岸に排出されるため。
- タバコの吸い殻を道路や海岸に捨てないこと。
- 釣り糸、網、釣り針を適切に廃棄すること。
- 通常は9月の第3土曜日に開催される、海岸清掃の日(Coastal Cleanup Day)や、その他の海岸清掃活動にボランティアとして参加する。
Videos
海洋に投棄されたゴミが環境と海洋生物に与える深刻な影響についてサーフライダー・ヨーロッパが作成したこの10分のビデオをぜひご覧ください:
以下は、米国海洋大気庁(NOAA)の海洋ゴミプログラム(Marine Debris Program)が作成した海洋ゴミのビデオです:
外部リンク
海洋ゴミについて:米国海洋大気庁(NOAA)によるサイト
Earth 911:どこでリサイクルをすることができるか、家庭用の有害廃棄物の廃棄方法、また、あなたの地域で開催される環境イベントの詳細についての情報を入手することが出来ます。(800) CLEAN-UP
California Marine Debris Action Plan
「環境に優しい」商品を購入する:National Green Pages (800) 58-GREEN
訳注:この記事は、サーフライダー・ファウンデーション・USAによってまとめられたものを、サーフライダー・ファウンデーション・ジャパンのボランティアが翻訳したものです。アメリカ合衆国の環境問題、政府機関、法律などに基づいて書かれたもので、日本の現状に基づいて書かれたものではありません。 |